たそがれのカツドウヤ 7仮払金は、入社そうそうに、給料をもらったような感じだった。正直言って。卒業あとのアルバイトの稼ぎののこりで、一ヵ月をもたせなければならなかった身の上には、助かった。終了定時になったが、みんなかえる気配はない。 どうしようかと思っていると、ナシコダが 「池袋方面なんだって?いっしょに帰ろう。」 あの血しぶき映画の企画書をかいていた男だった。でも、なんで、自分の家を知っているんだろう?不思議だ。 ちなみに、現役で大学にはいり4年で卒業したナシコダは、2つ年下だった。 ホラー映画が好きなナシコダは、大学は、都心にあるミッション系の難関大学で、その風貌といい。その趣味といいミスマッチには、誰もがおどろく。 しょざいなげに、ビデオのカタログをみていると、ホリウリやら、ウエが、「おさきに失礼します」と言い残して帰っていった。 内心、ひとりで帰りたい気持ちにもなったが、ナシコダの人間的興味もあり、待った。 「じゃあ、いこうか。」 ビルの一階に降りる。隣のビルは病院で、三浦百恵が出産した病院だ。 それはともかく、ナシコダは、 「なんか、英語できるんだって?」 これもどこから仕入れた情報なんだ? 「ちょっとさ、たのまれて欲しいことあるんだよな。これ。」 目の前におかれたのは、例のホラー映画の解説書。もちろん、すべて英語。 「どうすんですか?」 「来週までにこれ訳してきて。来週の企画会議にだす資料なんだ。たのまれてくれないか?」 ハダカよりはいいか、と思い、快諾した。 でも、血しぶきも、裸もノーマルではない こと。それが普通の環境にいるとわからなくなってしまう。 そのときがまさにそうであった。 ジャンル別一覧
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